とっても不幸な幸運

オススメ!
ちょっとひねくれているけれど、料理自慢で世界好き店長のいる酒場。
クセモノ常連客が集うこの店に、いわくつきの「とっても不幸な幸運」という名の缶が持ち込まれた。
缶の中から現れたのは、不思議な幻影やベートーベンの曲や、昔の知り合いの姿…。
いったいどんな意味が?そして缶を開けた人間にもたらされたのは「災い」?それとも「幸せ」?
じんわり温かく、そしてほんのり切ないファンタジーミステリー。

この本もずっと積読してました。
素敵な作品でした。
連作短編で、常連客たちの過去が明らかになっていきます。
「とっても不幸な幸運」の缶を開けたことで、自分の過去を突きつけられます。
それが不幸だったのか、それともその中に幸運があったのか。
それは、本人しか分からないんだろうな。
私は、読んでいて、過去と向き合ってよかったんじゃないかなと思うけど。
店長の洋介が素敵です。
なんだか強面で、口調もきつくて。
でも、情に熱くて実は優しいんですよね。
義理の娘ののり子との会話は可愛らしいし、何だかんだで世話焼きだし。
洋介の過去も終章を読んで、カッコイイ!と思ってしまいました。
そういう経緯があったんですね。
とても良かったです。

〈双葉社 2005.3
     2008.3〉H20.7.12読了