ツバメ記念日―季節風*春

オススメ!
「めぐりびな」夫の両親が、娘のみゆきのために大きな雛人形を贈ってきた。そのため、古い自分の雛人形は「めぐりびな」として供養される。
しかし、この雛人形は母との大切な思い出が詰まっているのだ。
「球春」僕らの町のヒーローが、日本のヒーローになり損ねて帰ってきた。名前は野口隆也、プロ野球に3年しか在籍していなかった選手。今は家に引きこもっているのだという。野口の母校で野球をしている僕は、彼にコーチになって欲しいと思っている。
「拝復、ポンカンにて」30年前、大学進学のため上京する事になっていたカズユキ。新幹線ではなく、夜行列車で行く事にしていた。それは、少しでも両親と一緒にいたかったため。いつもと変わらぬ両親の態度に、カズユキは拍子抜けした。
「島小僧」ヒロシは4月で生まれ育った島を出て行く。大学卒業後、戻ってくるかは分からない。島に本土を結ぶ橋が出来て以来、島の様子は変わってしまった。
「よもぎ苦いか、しょっぱいか」一軒家を建てたとき、庭をつくり、休みの日は土いじりを楽しんでいる。土の匂いは、かつて自分を女で一つで育ててくれた母の匂いだった。
「ジーコロ」若手社員と営業先へ向かう途中、若いときに住んでいた場所にたどり着いた。25年前とはかなり町並みが変わっていたが、電話ボックスだけは変わらず同じ場所に佇んでいた。
「さくら地蔵」さくらに囲まれている地蔵がいる。子どものいるトラックの長距離運転手が、日本各地から桜の花びらを集め、地蔵に備えると事故を起こさないという言い伝えがある。何故、この地蔵が建立されたのかは誰も知らない。
「せいくらべ」かつては社長だった父が苦境に立たされ、今は一軒家を二等分したテラスハウスに住んでいる。隣から苦情が来てから、弟のヒロの面倒を見、一緒に留守番をしている。
「霧を往け」泥酔していた中年の男がJRのホームから転落し、それを助けようとした青年共々亡くなったと言う事故が起きた。私は青年よりも、同い年の中年の男の方が気になり、彼の実家を訪れようとしていた。
「お兄ちゃんの帰郷」東京の大学に進学し、一人暮らしをしていた兄が帰ってくる。東京にはなじめなかったらしい。かつて家庭の事情から一人暮らし、進学を断念した父は、兄に多大な期待を抱いていた。
「目には青葉」和生は6年間、成り行きで付き合い、今でも曖昧な関係を続けている翠という女性がいる。翠が今日、自宅にやってくる。今日こそは思いを伝えようと緊張していた。
「ツバメ記念日」娘の由紀へ、父が由紀が生まれたことの家族の話を書面で告白する。

またまた重松さんです。重松さんの作品は本当にあったかいです。
家族が決していつも円満で幸せな事だけじゃない。でも、やっぱり一緒にいることで、大切さやありがたみを感じるんだって言う事を、改めて教えてくれます。
テーマが春だったので、「別れ」の作品が多かったように思います。
どの作品も素敵。大好きです^^
どれが良いって、決められないくらい素敵な作品でした。
だけど、当たり前ですが、一緒にいることが当然というわけではないという事も重松作品からは伝わってきます。
だから、一緒にいる今を、大切にしようとも思います。
「夏」は書店で見ました。「秋」も「冬」もきっとあるんでしょうね。
楽しみです。

〈文芸春秋 2008.3〉H20.7.4読了