ナラタージュ

オススメ!
大学2年の泉の元へ、1本の電話がかかってきた。
相手はかつての高校で演劇部の顧問をしていた葉山と言う教師だった。
卒業公演をするのに、人手が足りないからでてほしいという。
1年半ぶりの会話。
「それだけの理由ですか?」と問うと、「久しぶりに声が聞きたくなった」と先生は言った。

島本作品では珍しく、凄く長編だな〜と言う印象。
いつもの作品より長く感じた。
それほど、泉と葉山先生の恋愛が細かく描かれていると言う事なのかな。
初めに読み進めていったとき、かつての生徒と先生という関係から、甘酸っぱい恋物語なのかななんて思っていたけど、そんな簡単には言えない作品でした。
泉が葉山先生を思う気持ちは痛いほど伝わってくる。
だから、決して結ばれないのだとわかっていても、忘れられずに思っていることもわかる。
凄く切ない恋物語。
そして小野君という、自分の事を好きでいてくれる人と出会い、付き合って段々小野君の事を好きになって言ったけど、いつの間にか歯車が狂ってしまっていた。
先生を忘れられずに想う気持ちもわかるし、小野君が泉を離したくない為にしてしまった行動もやりすぎだとは思うけどわからなくはない。いや、泉にした態度はひどいものもあったけど。
でも、元々の事の発端は葉山先生から来た1本の電話。
泉は別れて新しい未来を生きようとしているのに、自分の都合で泉に電話をかけてくる。
葉山先生は、登場する誰よりも子供なんだなぁと思ってしまった。
身勝手で、迷惑な、でも愛おしくて忘れられない存在なんだろうな。泉にとって。
泉はわかりやすくて可愛らしい存在だったけど、相手に対する思いはハッキリとしているし、伝えもする。
そこが素敵で魅力的だとも思う。
最後はいい結末だったのかなぁとも思う。
「きっと君は、この先、誰と一緒にいてもその人のことを思い出すだろう。だったら、君といるのが自分でもいいと思ったんだ」そう言ってくれる男性に出会えて。
最後まで、葉山先生は子供だったなって、思ったけど。

p369「子供だったから愛とは違うとかじゃなくて、子供だったから、愛してるって言う事に気付かなかったんだよ」

〈角川書店 2005.2〉H18.9.12読了